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- CsIシンチレーターとフォトダイオードで放射線検知Created 2012-04-16T04:11:18+09:00 LastModified 2012-04-16T08:21:40+09:00
私の持っているNaI(Tl)シンチレーターでスペクトルを測定していたところ、700 KeV以上のガンマ線の光電効果の効率が低すぎて700 Kev以上のスペクトルが得られなかった。
40Kが見えないのでカリウム由来の影響が測れないということと、134Csの796 KeVのピークも見えないので、現状のガンマ線での核種判別で重要な放射性セシウムの判定に必要な情報が中途半端にしか得られないのが問題であった。
そんな中、福島第一原発の事故で放射線の測定器の需要が高まった結果、放射線測定器の自作用に秋月電子でガンマ線検知用のタリウム添加ヨウ化セシウム-CsI(Tl)-の結晶が店頭で購入できるようになっていた。
検知器まで自作するのは私の腕ではハードルが高いと思っていたが、実際に作っている人の公開している情報を見ると、1 cm角のCsIではカリウム由来のピークが検知できるようであったので、別のNaIシンチレーターの購入の可能性やコストとかと比較して、チャレンジしてみることにした。
1号機(動作せず)
まずは以下のサイトを参考にして作ってみた。
放射性セシウムの600 KeV台のピークと796 KeVが分離できているようなのと、部品点数が少なそうなので、この回路で作ってみることにしたのだが……動作させることが出来なかったままあきらめることになった。
この回路の左側にCsI+PDがつく形になるんだが……

秋月で売っていた2.54 mmピッチ4×4のユニバーサル基板を数個切らずにつなげて使っている。基盤の橋渡しをするようにアキシャルリード部品でつなぐことで体積を縮小するという発想で実装してある。
目指した形状は棒状なんだが、電子部品の形状に疎かったため、想定していたよりいびつな形になっている。電解コンデンサや半導体がこんなにでかいとは……。
さらに後から確認したら、FETやらICやらの向きが間違っていたりと、最初からこんなに複雑でリカバリ困難な構造の配線をしてしまったのが敗戦要因だ。決して回路設計が悪いのではない。
そこで、もう少しシンプルな実装にしようかとブレッドボードで試しながら悩んでいたところ(2号機)、某2chで公開された回路が、より部品点数が少なく十分な性能があるようなので作ってみた。
3号機
参考にした回路は、後日ブログでも公開された。以下の回路だ。
前回の反省からいきなり実用を目指さず、色々いじくれるようにユニバーサル基板で実装した。

3ピンコネクタの先にCsI+PDがつく形。アルミのケースに入れて動作させる。3ピンコネクタでつなげたのは、次の回路を構成するのに高価なCsI+PDを流用した場合に、また元に戻したりすることを考えてのことである。
ニョロっと伸びた針金はケースに接続してアースとなる。
この回路でようやく放射線を検知した。
線源との距離を近づけたり遠ざけたりした場合にパルス状の信号の頻度が変わったことから、明らかに放射線を検知していることを確認した。
パルス形状もNaI+PMT(光電子倍増管)と同じであった。パルス高でスペクトルも得られた。
電源は、試験回路ということもあり電池である。
この回路で、動作させる自信がついたので、実用回路を目指して次の実装を行った。
4号機
3号機の回路を元に、実用を目指して形状を小型化。
色々実装上の試みがあり、1号機のころ目指していたプローブの理想系に近づけることが出来た。

1号機の実装方法から発展し、基板の向きを積層型に変えることで、より配線の自由度を増してある。
ケースにはアルミチャンネルを利用している。近所のホームセンターで買える代物である。15 mm角でアルミの厚さは2 mm。回路を入れたら0.3 mmのアルミ板でできた蓋をする。
CsIを覆うための20 mm角のアルミチャンネルをヤスリで削ったものが左に写っている。1.5 mm以上の厚みのアルミで覆わないとベータ線の影響を受ける可能性があるのではないかと考えたためである。
この回路では最初は電池で動かしていたが、その後USBから電源をとるために昇圧回路を別パーツで追加している。参考にしたのは以下のページだ。
USBの5 Vから9 Vの電圧を得たが、リップルノイズが信号に直接影響したので、フィルター回路でノイズを減らしてやった。参考にしたのは、以下のページだ。つくづく何でも借り物である。
1段では必要なレベルまでノイズを除去できていなかったが、明らかな効果があったので、2段にしたところ実用上問題ないレベルまでリップルノイズを低くできた。
5号機
4号機の361回路がアップグレードした366回路が公開されたので、4号機で得た知見やその後の学習で知りえた知識を元に、5号機を実装した。
4号機の回路では電源部分まで含めると結構長いプローブになるため、実装方法を再検討し、アキシャルリード部品をメインにした実装からチップパーツをメインにした表面実装回路に変更した。これにより、基板間の間隔をより詰めることが出来、体積をさらに小型化することが出来た。また、配線をより効率的にしたため、基板枚数を減らすことにも成功した。

当初、4号機は3ピンコネクタでCsI+PDに接続していたが、体積を食うのでより小さいコネクタに変更している。これで3号機にはもうそのままでは接続できない。
電源回路も表面実装部品を多用し小型化したため、かなりの小型化に成功している。

中央部分のテフロン巻きはアンプ回路と電源回路の接続コネクタの接触不良を防ぐために巻きつけたもの。テフロン巻きの左がアンプ部、右が電源部である。
ケースはアルミチャンネルからアルミ角パイプに変えた。15 mm角の1.5 mm厚。頭の部分は3 mm厚のアルミ板でアルミテープで貼り付けている。なお、クッション材として低反発クッションを少々詰めてある。
現状の5号機の外観はこのようになっている。

電源用のUSBケーブルと信号用の音声ケーブルの2本が80 mm長15 mm角のプローブから出ている。
振動を拾ってしまうので手に持って使うのは難しいが、とりあえず持ち出すことが出来るようにはなった。
まだケースとのアースの接続に問題があり、また、USBの5 Vが安定していないとその影響を受けることがあるため、調子は安定していないが、調子がいいときは70 KeV程度まで検知可能だ。

CsI(Tl)+PDでの放射線検知についての考察
(まだ書きかけ)低ノイズといっても100 KeV以下は難しそう/100 KeV以下を測る意義と実用機の実際/より小型化するためには/スマートフォンで動かせないかな/CsI(Tl)のテフロン巻き加工とか/その他の公開されている回路/シーベルトとかの単位ってそもそも/などなど
誰かが5 Vで動作する低ノイズ回路を公開してくれれば、6号機はもっと小型化できるんだが……とか、まだまだ他力本願である。
- 放射性物質測定用遮蔽体の構造Created 2012-02-14T02:30:45+09:00 LastModified 2012-02-14T03:42:49+09:00
鉛ブロックと木材でつくる遮蔽体
以前書いた放射性物質測定用遮蔽体と試料容器についてで、詳細な構造図はまた今度と書いたまま放置してたが、別プロジェクトがひと段落ついたので掲載する。
放射線を遮蔽するのは鉛ブロックで、木材は構造を保つためのスペーサーなので、別に木材じゃなくてもいいです。
1インチシンチレーターを使って測定する場合、おおむね全周囲5 cm厚の鉛の遮蔽体とするには、多分これが最小構造だと思う。
使った資材や、写真は放射性物質測定用遮蔽体と試料容器についてを参照のこと。
- 側面図

横から見るとこんな感じ。蓋の10 cmブロックの下に、ケーブル配線用のスペーサーとして木切れが1 cmの厚さで敷いてあり、その下に20 cmブロックが4つ、遮蔽空間を囲むように立っている。ブロックが倒れないように、木の板で足元が囲われている。
- 上面図

蓋の10 cmブロックとスペーサーの木切れをはずして上から見るとこんな感じである。
- 20 cmブロックの組み合わせ

5 mmずらして組み合わせることで遮蔽空間のサイズを調整している。中央の空白が遮蔽空間になる。もっとも鉛の厚さが薄い部分は45 mmになるが、1インチシンチレーターからはおおむね50 mm以上の厚みを常に確保された形となる。なぜ内径55 mmにしたかは、前述のとおりである。
- 側面から囲いの板を除いた図

20 cmブロックの下は、5 cmの木切れ層とその底に10 cmブロックの層がある。
- 底部の図

10 cmブロックを囲うように木切れを配置している。不ぞろいなのは、適当な木切れを使ったため。要は上部構造物の足になっていればいいので、これで問題はない。
- 鉛ブロックとプローブとシンチレーターの配置

鉛ブロックとシンチレーターのジオメトリを考えてみよう。赤色がシンチレーターである。木切れは消してある。横方向は50 mm厚の遮蔽を確保しているが、シンチレーターの角から20 cmブロックの角をめがけて斜め方向に直線を引いてみると、蓋や底はもっとも薄い部分が50 mm厚に不足する。蓋や底にはもう少し大きいブロックがほしいところだ。できれば、15 cm×15 cm×5 cm のものがベストだが、特注になってしまうような気がするので、まあ良しとすべきか。
今後の予定というか
いずれ、銅板とアクリル板で、鉛由来の放射線対策をするつもり。と、これで何度書いたろうか。既に銅板は買っているが、加工するのがめんどくさい。
- 放射性物質測定用遮蔽体の効果についてCreated 2012-01-25T23:56:06+09:00 LastModified 2012-01-27T03:47:26+09:00
放射性物質測定用遮蔽体と試料容器についてで、記述した遮蔽体の効果判定をしてみた。
バックグランドの遮蔽効果
まずは、ブランクでの比較結果でバックグランドからの放射線をどれだけ遮蔽できているかを確認してみる。
なお、測定条件は以下全て18000秒。特に記述がなければ、ブランクを除き5 mLの小試料用容器に試料を入れている。このスペクトルは、最大値ピークでスケールが変わる対数グラフである。
パルス数比では95%以上の遮蔽性能という結果だった。
遮蔽無しでは、環境中にある放射性セシウムの影響でピークが見えるが、遮蔽するとピークは見えない。試料のセシウムなのか環境由来のセシウムなのかが区別できそうである。
なお、遮蔽では80 keVあたりにピークがあるが遮蔽体である鉛が出す特性X線らしい。これは銅の内張りなどで対策が可能らしい。今後の検討課題である。
明らかに放射性物質であるものを測る
ランタンのマントルを遮蔽体ありなしで測った結果がこれだ。
あまり違うようには見えない。
なお、このマントルはサーベイメータに近づけると0.4 μSv/h程度の表示になる。こういうものを測る際は遮蔽体は無意味かもしれない。
やさしお
PRA(4.0)を使ってこのようにスペクトルを測るには、パルスピーク高とエネルギーを関連付けてやる必要がある。
私は、入手が容易であったマントルに含まれるトリウム(232Th)の娘核種の出す複数のピークを元にこの関連付け――エネルギー校正――を行っているが、他に自然界によくある放射性物質といえば40Kがある。
40Kは自然界のカリウムに一定の割合(0.012%)で含まれており、カリウムを測れば、その割合で含まれる40K由来のガンマ線を検出できる。
そこで、入手が容易なカリウム源として、やさしおがよく使われている。
やさしおを測れば、1460 keVが確認でき、また、物理量がわかっているため、定量を行う際のソースとしても使うことが期待できる。
しかし、遮蔽体なしでは環境放射線にまぎれてしまい、まったくピークが確認できなかった。
そこで、環境放射線を遮蔽することによって、やさしおのピークが確認できるのではないかと期待して、測定をしてみた結果が以下のものである。
嗚呼……、まったくピークが見えないではないですか。orz
この測定では、放射性物質測定用遮蔽体と試料容器についてでも説明した小容量用容器を使用して測っている。
そう、試料が少なかったせいである。と、思い、大容量容器として用意したU-8容器にやさしおを詰めて測定したものがこれだ。
嗚呼、嗚呼……、やさしおのやさしいピークは、まったく検出されませんでしたとさ。orz
しかし、ブランクとの比較では明らかにパルス数が増えている。また、1000 keVあたりに微妙にピークが見えるようになったではないか。
これはつまり、私の計測器は、確かに40Kの出す放射線を検知している。ということだ。
しかし、これは光電効果によるものではなく、コンプトン効果を拾っているようである。また、カリウム由来を測りたいのはエネルギー校正を目的としているので、まったく使いものにはならない。
やはり、私の1インチウェル型の検知器の限界のようだ。物には、向き不向きがあるものなので、あきらめるべきだろう。
放射性物質が入っているかどうかわからないものを測る(その1)
さて、いよいよ実際に「これには放射性セシウムが入っているか」という測定をしてみる。
まず、試料その1「スギの花芽」。都内某所で採取した採れたて新鮮な今年のスギの花芽である。
今年のスギの花粉には放射能が含まれていて危険ではないかという話があるが、実際観測できるものだろうか。
どうやら放射性セシウム由来のピークは見えないようだ。また、パルス数でもブランクよりは多いが、ごくわずかだ。
この機器で検出可能なレベルでは放射性セシウムは含まれていないようだ。
放射性物質が入っているかどうかわからないものを測る(その2)
続いて、試料その2「近所の土ぼこり」。都内某所の道の端っこ(L型街渠)に溜まってた土をかき集めたものである。
これならばきっと放射性セシウムが含まれているに違いない。ただし、この土はこの地域の汚染状況を確認するサンプルはないので注意。どれくらいの面積から集まって溜まった土ぼこりであるかが不明なためである。
おそらく放射性セシウムからの放射線であろうピークが確認できる。パルス数は、やさしおより若干多い程度だ。つまり、それほどとんでもなく汚染された土ではないということだ。
620 keVあたりを中心としたピークがあるが、これは134Csの563 keV(8.4%)、569 keV(15%)、605 keV(97.6%)と137Cs(正確には137mBa)の662 keVが混じったもののようだ。
他にも、ブランクとは違うピークが検出されているが、134Csの796 keV(85.5%)が見当たらない。
やはりカタログにあったとおり、700 keV以上は検出効率が著しく落ちているのだろうか。
もっと多くの放射性セシウムを含んでいる物体でなければ、134Csの796 keVのはっきりとしたピークは得られないのかもしれない。
